シンガポールで起業をする11つのメリットと5つのデメリット

シンガポールは起業のしやすい国と聞いたことのある方は多いと思います。しかし、事業運営には大きなリスクも伴います。シンガポールで起業を考える際には税制や起業家支援などの表面に見えるメリット以外にも隠れたデメリットに注意を払う必要があります。そこで本記事では、シンガポールで起業する際のメリット・デメリットを考えてみました。

シンガポールで起業する11のメリット

1.法人登記が簡単

日本法人として法人登記を行う場合、定款の収入印紙や登録免許料などの費用だけで20万円ほどになるのに加え、審査と手続き内容の複雑さから代理業者への依頼が一般的で、登記申請まで1週間程度かかります。しかし、シンガポールの法人登記の手順はシンプルです。就労ビザ(EP)の申請は審査基準が厳しくなっており、代理店に依頼するケースが多いかと思いますが、費用と時間的コストを勘案して適切に業者を活用することで、即日法人登記できます。

また、ご自身がシンガポールに居住しない場合も、居住取締役を一名選任すればよいという制度や、最低資本金はS$1ということももあり、法人登記は比較的容易に済みます。

2.ENTRE PASSの存在

日本では起業家ビザ(Entrepreneur pass)と呼ばれています。資本金S$5000以上、年間支出S$100,000(有効期間1年の場合)、現地雇用2名以上(有効期間1年の場合)、イノベーティブな事業内容などの審査基準を通過すれば取得可能です。しかし現在、この基準が厳しすぎるという意見から、
資本金制限の撤廃など条件の緩和が予定されています。これにより、学歴や収入面で取得が難しいEPが無くても、起業家として事業を立ち上げることができます。

3.海外への販売、情報発信ルートの豊富さ

シンガポールは工業、中継・加工貿易の拠点として発展したことから、海運・空運ともにインフラが整備されています。そのため、特に物を扱うビジネスでは致命的な商品搬送の遅延、不確実性が低く、安心して取引を行えます。

さらに、資産1億円以上の国民の比率世界一の国として、世界中の企業が注目しており、シンガポールでシェアを上げると、東南アジアを中心とした諸外国から提携のオファーが届くことも少なくありません。さらに、富裕層が多いため日本には出回っていない市場情報に触れることも可能です。

4.通信環境が整備されている

シンガポールは国が小さいため、通信環境で不便を感じることはありません。日本の通信環境は世界トップレベルであるため、国外でその差に戸惑う方もいます。その点、シンガポールは海外での起業の地として適していると言えます。

5.インフラ、生活環境が整っている

これも日本同様に、交通機関や生活インフラが整っているため、生活ストレスはほとんど感じない方が多いです。特に、満員電車やジンジン事故がないという点は、日本よりも優れている点といえます。

6.資金集めが比較的容易

先述のとおりシンガポールには富裕層が多いこと、さらにキャピタルゲインへの税金が非課税であることから、投資家は起業家への投資に積極的です。そしてこの流れは近年加速しており、大きなアドバンテージになる可能性があります。

7.法人税の低さ世界一

シンガポールは法人税が17%と、日本の法人税は74%に比べ明らかに低いです。所得税も最高でも22%、日本では最高45%となっているので、生み出した利益を企業に還元しやすいシステムといえます。

8.国としての安定性

シンガポールは国の小ささゆえ、経済的に安定しにくいと言われています。確かに、世界情勢に景気が左右されやすいのは事実ですが、国としての投資価値、貨幣の信用性の評価は世界でも有数です。それは小さい国だからこそ軍事拡張に注力した政府の狙いがあります。

9.親日であり日本人に対する信頼を得ている

シンガポールはかつて日本の植民地でした。しかし、シンガポールの経済発展に日本の存在は不可欠だったため、政府は積極的に日本に交流を持っており、日本人への信頼は大きいです。この良好な関係は、自力で顧客や従業員を獲得しなければならない創業初期に、事業をより円滑に進めるための大切な要因になります。

10.業種規制がない

外国人である私たちが開業する際に、開業する業種が制限されるのはしばしばあることですが、シンガポールでは新聞や出版などのメディア事業を除き制限されていません。(多くの国でも同様にメディア事業を禁止しています。)

11.バイリンガルや優秀な人材が多い

シンガポールは実力主義とアジアトップレベルの教育水準、さらに英語以外の3つの公用語があることから、シンガポールには国際的にも重宝される人材が集まっています。一人当たりの名目GDPが日本の5倍であることからもその生産性の高さがうかがえます。

シンガポールで起業する5つのデメリット

1.家賃が高い

税金が安い反面、売り上げが立たない創業初期にはオフィスの賃料が大きなネックになります。中心部のビジネス街から電車で20分程度離れた地域でも月S$130(¥11,000相当)/㎡です。六本木・麻布地域が月¥6000/㎡程度ですからその賃料の高さがわかります。一定の審査を要しますが、セントラルに設けられたスタートアップ向けシェアスペースなどを活用するのも良いでしょう。

2.変化の速い法律への適応が必要

シンガポールは一院制かつ一党独裁政治ですので非常に動きが速い国です。常に合理的な政治を求め制定、改善しています。近年シンガポールでの就労ビザがとりにくくなっているのも、シンガポールが国民の意見を取り入れ行動に移している影響です。このような体制の変化に対応する必要があることは、経営資源が少ないスタートアップ経営に影響を及ぼす可能性があります。

3.現地社員のコミットメントは期待できない

シンガポール人は定時になると帰宅するのが一般的な文化です。これは仕事に追われるスタートアップ段階でも同様です。日本人のように深夜まで残って仕事というコミット姿勢は期待できないでしょう。

4.SpassとEPスタートアップは人を雇いにくい

比較的取得しやすいSpassですが、これは、シンガポール現地人を3人雇った場合にのみ、1人Spass取得者を雇用できるという決まりがあります。Spass取得者の雇用には同時に3人の人件費を払う必要があるということです。そこで日本人を創業メンバーに迎える場合、EPを取得するという方法もありますが、これを取得するには最低給与額が決められており、新卒でも月S$3,600(¥300,000相当)以上の給料を受け取らなければ取得できません。さらにこの基準は、取得者の職務経験が長いほど高くなります。シンガポールで人を雇うことはコスト面での制約が強いことは覚悟しなければなりません。

5.ローカル法人のみ営業行為可能

法律により、シンガポールでは駐在事務局の営業行為は禁止されています。

まとめ

シンガポールは政治的な起業家誘致が大きな好要素になっている一方、優秀な人材を優遇する合理的なシステムが起業への敷居を高くしているように見えます。全体として、将来的にグローバルに事業を展開していきたい方には適した拠点になるでしょう。各国の特徴を踏まえて、ご自身に適した地域を選定する必要があります。

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